はじめまして、社会保険労務士の山田と申します。
これからこのブログでは、社会保険・労働保険・労務管理に関するさまざまな情報を、わかりやすく丁寧に発信してまいります。
日々の業務のヒントや、経営者・人事担当者の皆さまにとって役立つ情報を中心に更新していきますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
まず最初の投稿内容は、社会保険・労働保険についてです。
「社会保険?」「労働保険?」「なんか複雑そう…」
そう思っていませんか?
従業員を雇い入れる経営者にとって、社会保険と労働保険は避けて通れないテーマです。しかし、その制度は多岐にわたり、手続きも煩雑で、正直よくわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。
でもご安心ください!
この記事では、社会保険と労働保険の基本を、中小企業の経営者の方が「これだけは知っておくべき!」というポイントに絞って、分かりやすく解説します。法律を遵守し、従業員が安心して働ける環境を整えるためにも、ぜひ最後までお読みください。
1. 社会保険・労働保険って何?それぞれの違いと役割を理解しよう
まず、社会保険と労働保険がそれぞれどのような制度なのか、その目的と役割を見ていきましょう。

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社会保険(健康保険・厚生年金保険)
主に従業員の生活の安定と医療・老後の保障を目的とした保険です。
- 健康保険: 従業員やその家族が病気やケガをした際の医療費負担を軽減したり、病気で働けない期間に「傷病手当金」を支給したりします。
- 厚生年金保険: 従業員が老齢になったときの「老齢厚生年金」の他、万が一の障害や死亡の際に「障害厚生年金」「遺族厚生年金」を支給し、生活を支えます。
これらの保険料は、原則として**会社と従業員が半分ずつ負担(折半)します。

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労働保険(労災保険・雇用保険)
です。
- 労災保険(労働者災害補償保険): 従業員が業務中や通勤中に発生した事故や病気に対して、治療費や休業補償などを支給します。これは全額を会社が負担します。
- 雇用保険: 従業員が失業した際に「基本手当(失業給付)」を支給したり、育児休業中や介護休業中に「育児休業給付金」「介護休業給付金」を支給して生活を支援します。また、従業員のスキルアップのための教育訓練給付金など、雇用の安定・促進のための役割も担っています。雇用保険料は会社と従業員で負担します。
【ポイント】 社会保険は日本年金機構が、労働保険は厚生労働省(ハローワークや労働基準監督署)が所管しており、それぞれ目的も保険料の負担割合も異なります。
2. 「うちの会社も入らないといけないの?」加入対象者と加入義務
「うちは小さい会社だから関係ないんじゃない?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、原則として労働者を一人でも雇い入れたら、社会保険・労働保険への加入義務が発生します。

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社会保険の加入義務
法人の事業所:従業員の人数に関わらず、原則として強制適用事業所となり、社会保険への加入が義務付けられています。
個人事業所:常時5人以上の従業員を使用する事業所は強制適用です。
短時間労働者(パート・アルバイト)の加入:一定の要件(週の労働時間、月額賃金、企業の規模など)を満たす短時間労働者も社会保険の加入対象となります。特に近年、この適用範囲が拡大されていますので注意が必要です。

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労働保険の加入義務
労働者を一人でも雇用したら、原則として労働保険(労災保険・雇用保険)への加入義務が生じます。(ごく一部の業種で例外があります)
パートやアルバイトの方も、原則として雇用保険の適用対象となります。
3. 加入手続きの流れと必要書類をチェック!
「いつまでに、何を提出すればいいの?」という疑問にお答えします。
社会保険の加入手続き(健康保険・厚生年金保険)
従業員を雇用したら、原則として入社日から5日以内に以下の手続きが必要です。
- 新規適用届: 事業所として初めて社会保険に加入する際に提出します。
- 被保険者資格取得届: 新たに従業員を雇用した際に、その従業員が社会保険の被保険者となるための届出です。
提出先: 事業所の所在地を管轄する年金事務所
主な添付書類: 法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)、労働者名簿、賃金台帳など
労働保険の加入手続き(労災保険・雇用保険)
従業員を雇用したら、まず保険関係成立届を提出し、その後に労災保険と雇用保険の手続きを行います。
- 保険関係成立届: 労働保険の保険関係を成立させるための届出です。原則として労働者を雇用した日から10日以内に提出します。
- 概算保険料申告書: 労働保険料の概算額を申告・納付するための書類です。
- 雇用保険適用事業所設置届: 事業所として初めて雇用保険に加入する際に提出します。原則として事業所設置の日から10日以内に提出します。
- 雇用保険被保険者資格取得届: 新たに従業員を雇用した際に、その従業員が雇用保険の被保険者となるための届出です。原則として資格取得の事実があった日から10日以内に提出します。
- 提出先: 労働基準監督署(労災保険)、ハローワーク(雇用保険)
- 主な添付書類: 法人の登記事項証明書、賃金台帳など
【手続きのポイント】 手続きには期限があります。遅れると行政指導や遡っての保険料請求など、不利益を被る可能性がありますので、早めに準備しましょう。最近では電子申請も可能になってきています。
4. これが一番気になる?保険料の計算方法と納付
社会保険料も労働保険料も、基本的には従業員の給与(賃金)に基づいて計算されます。

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社会保険(健康保険・厚生年金保険)
標準報酬月額: 健康保険と厚生年金保険の保険料は、毎月の給与額を区切りの良い幅で区分した「標準報酬月額」に保険料率をかけて算出されます。この標準報酬月額は、入社時や年に一度(定時決定)、大幅な給与の変動があった場合(随時改定)に見直されます。
保険料率: 全国健康保険協会の健康保険料率は都道府県によって異なり、厚生年金保険料率は全国一律です。これらは定期的に見直されます。
計算例: 例えば、標準報酬月額が30万円の場合、健康保険料と厚生年金保険料の会社負担分(折半)と従業員負担分を合わせた額が保険料となります。ボーナス(賞与)にも保険料がかかります。

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労働保険(労災保険・雇用保険)
賃金総額が基本: 労働保険料は、事業所で支払った賃金総額に、それぞれの保険料率をかけて算出されます。
労災保険料率: 業種によって保険料率が異なります(例:事務職が多い事業所と、建設業では危険度が異なるため料率が違います)。
雇用保険料率: こちらも事業主負担分と従業員負担分があります。
年度更新: 労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間の賃金総額に基づいて計算し、6月から7月にかけて「年度更新」という手続きで納付します。
5. 経営者が陥りやすい落とし穴と注意点
「知らなかった」では済まされないのが、社会保険・労働保険です。よくある失敗例と注意点を知っておきましょう。
- 未加入のリスク: 「知らなかった」「小さい会社だから大丈夫だろう」と加入を怠ると、過去に遡って多額の保険料を請求される可能性があります。また、従業員からの信頼を失い、離職にも繋がりかねません。
- 手続きの漏れ: 入社時や退社時だけでなく、育児休業や介護休業の取得、給与の大幅な変動など、従業員の状況が変わるたびに必要な手続きがあります。これらを怠ると、従業員が適切な給付を受けられなかったり、会社に不利益が生じたりします。
- 保険料計算の誤り: 標準報酬月額の見直しや年度更新の計算を誤ると、後から追徴金が発生することもあります。
- マイナンバー制度: 社会保険・労働保険の手続きには、従業員のマイナンバー(個人番号)が必要になります。適切な管理が求められま

まとめ:複雑な制度は社労士に相談し、本業に集中しよう!
社会保険・労働保険は、従業員を守り、企業の信頼性を高める上で不可欠な制度です。しかし、その複雑さや頻繁な法改正への対応は、経営者の方にとって大きな負担になることも事実です。
- 「手続きが複雑でよく分からない」
- 「最新の法改正に対応できているか不安」
- 「従業員の入退社が多くて管理が大変」
- 「万が一のトラブルを未然に防ぎたい」
もし一つでも当てはまるなら、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。
私たち社会保険労務士は、社会保険・労働保険に関する専門家です。複雑な手続きの代行はもちろん、法改正への迅速な対応、トラブル予防策の提案、さらには助成金に関する情報提供など、企業経営を多角的にサポートいたします。
社会保険・労働保険の適切な運用は、企業の安定と成長に繋がります。ご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
従業員と共に、成長できる未来を築いていきましょう。