「働き方改革」や「男性育休の促進」が叫ばれる中、国は子育てと仕事の両立をさらに強力にサポートするため、2025年度から、育児休業給付金制度に新たな給付金を創設しました。

それが、「出生後休業支援給付金」「育児時短就業給付金」です。

「新しい給付金って何?」「うちの会社や従業員にとってどんなメリットがあるの?」 「結局、会社としてどう対応すればいい?」

そう感じている経営者さんや人事ご担当者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

このブログでは、社会保険労務士である私が、2025年度から新設されたこれら二つの給付金の概要、目的、そして企業が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。これらの制度を理解し、適切に活用することは、従業員の定着率向上や採用力強化、ひいては企業の持続的な成長に直結します。ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。


なぜ新しい給付金が創設されたのか?~制度新設の背景と目的~

今回の給付金新設の背景には、大きく以下の目的があります。

男性の育児休業取得をさらに促進

特に、産後間もない時期の男性の育児参加を後押しすることで、夫婦での育児分担を促し、女性の産後うつやキャリア中断の防止を目指します。

「育児と仕事の両立」の現実的な支援

育児休業明けにフルタイムに戻りにくい現実がある中で、時短勤務を選択した際の賃金減少による経済的負担を軽減し、柔軟な働き方を支援します。

少子化対策の一環

子どもを産み育てやすい環境を国として整備することで、少子化の流れに歯止めをかけることを狙います。

これらの目的を達成するために、育児休業制度の「前半」と「後半」をカバーする形で、二つの給付金が新設されました。


子育てのスタートを応援!「出生後休業支援給付金」とは?

「出生後休業支援給付金」は、主に男性が子の出生直後に取得する育児休業を経済的に支援する制度です。従来の育児休業給付金とは別に、所得代替率が大幅に引き上げられる点が特徴です。

  • 目的: 夫婦で協力して育児を行うことができるよう、特に男性が産後間もない時期に休業を取得しやすい環境を経済面からサポートすること。
  • 対象期間: 子の出生後、**一定期間内(例:出生後8週間以内など、詳細な期間は今後の政令で確定)**に取得する育児休業。
  • 給付額: 従来の育児休業給付金(休業開始時賃金の67%)よりも、さらに高い実質手取り10割相当を目指す給付率となる見込みです。例えば、標準的な賃金であれば、給付金が休業前賃金の80%台後半に設定され、社会保険料の免除と合わせることで、手取り額が休業前とほぼ同水準になることが想定されています。
  • 特徴: 育児休業を短期間取得する男性が、経済的な不安なく休業できるよう設計されています。

【企業への影響】 男性従業員が育休を取得しやすくなるため、休業中の業務体制や、休業からの復帰支援に関する社内体制の整備がより一層重要になります。男性育休の取得率向上は、企業のブランディングにも繋がります。


短時間勤務でも安心!「育児時短就業給付金」とは?

「育児時短就業給付金」は、育児休業から復帰後、時短勤務を選択することで賃金が減少した従業員に対し、その減少分の一部を補填する目的で支給される給付金です。

  • 目的: 育児との両立のために時短勤務を選択した従業員が、経済的な理由でフルタイムに戻ることを余儀なくされたり、キャリアを諦めたりすることがないよう、柔軟な働き方を経済面から支援すること。
  • 対象者: 育児休業から復帰後、所定労働時間を短縮して就業している従業員。
  • 給付額: 短時間勤務によって減少した賃金の一部をカバーする形で支給される見込みです。例えば、時短勤務により賃金が10%減少した場合、その減少分の一部が給付されるようなイメージです。(具体的な給付率・計算方法は今後の政令で確定)
  • 特徴: 短時間勤務を無理なく継続できる環境を整備することで、従業員の定着や、多様な人材の活用を後押しします。

【企業への影響】 時短勤務制度の利用が促進される可能性があります。従業員が安心して時短勤務を選択できるよう、社内の時短勤務制度の運用ルールを再確認し、必要に応じて見直すことが求められます。また、時短勤務者の業務分担や評価制度についても、柔軟な対応が求められるでしょう。

企業が今から準備すべきこと

これらの新しい給付金制度の開始に向けて、企業は以下の点を準備・確認しておくことが重要です。

  • 社内規定の見直し: 育児休業規程や就業規則、賃金規程が、新しい給付金制度の趣旨に沿った内容になっているか確認し、必要に応じて改定を検討しましょう。
  • 従業員への情報提供と周知: 新しい給付金制度の内容を従業員に分かりやすく周知し、利用を促すための情報提供を行いましょう。特に男性従業員への周知は重要です。
  • 人事・労務担当者の知識向上: 給付金の申請手続きや、制度に関する問い合わせに対応できるよう、人事・労務担当者は制度内容を深く理解しておく必要があります。
  • 柔軟な働き方を支える体制整備: 短時間勤務者の業務分担の見直し、テレワークの導入、コアタイムのないフレックスタイム制度の検討など、多様な働き方を許容する体制づくりを進めましょう。
  • 目標設定・公表(従業員100人超の企業): 2025年4月からの努力義務に対応するため、男性の育児休業等取得状況の目標設定と公表方法を具体的に検討しましょう。

新しい給付金は、企業成長と従業員満足の強力なツール

2025年度に新設される「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」は、単に経済的な支援に留まらず、企業が子育て世代の従業員を支え、働きがいのある職場を創り出すための強力なツールとなります。

これらの制度を積極的に活用し、従業員が仕事と育児を無理なく両立できる環境を整えることは、

  • 優秀な人材の確保と定着
  • 従業員エンゲージメントの向上
  • 多様な人材の活躍によるイノベーション創出
  • 「子育てに理解がある企業」としての企業イメージ向上

といった、計り知れないメリットを企業にもたらすでしょう。

「新しい給付金の申請手続き、どうすればいいの?」 「うちの会社で男性育休をもっと増やすには?」

といった疑問やご不安がありましたら、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。貴社の状況に合わせた最適なアドバイスと、
制度導入・運用に向けた実務的なサポートを提供させていただきます。

従業員と共に、成長できる未来を築いていきましょう。