神奈川県(横浜市・川崎市・東京都)の介護事業所の立ち上げを専門にサポートしている、行政書士・社会保険労務士の山田です。

連載第2回では、会社設立時の「定款(事業目的)の落とし穴」についてお話ししました。会社の準備が無事に進むと、いよいよテンションが上がる「物件探し」のスタートです。

「駅から近くて、広くて、家賃も手頃!不動産屋さんも『デイサービスにピッタリですよ』って言ってくれたし、ここに決めよう!」

ちょっと待ってください!その物件のハンコを押す前に、絶対に確認しなければならない「法律の壁」があります。 これを無視して賃貸契約を結んでしまうと、最悪の場合「家賃だけ払い続けて、一生デイサービスをオープンできない」という悲劇に見舞われます。

介護事業所は「普通のオフィス」とは違う

デイサービス(地域密着型通所介護)を開業するためには、単に「広さ」があれば良いわけではありません。高齢者や要介護者をお預かりする施設であるため、「建築基準法」「消防法」という非常に厳しい法律の基準をクリアする必要があります。

ここで経営者様を待ち受ける最大の罠が、建築基準法における「用途変更(ようとへんこう)」という手続きです。

最も恐ろしい「200㎡の壁」とは?

元々が「事務所(オフィス)」や「物販店舗」だった物件を、デイサービスなどの「児童福祉施設等(特殊建築物)」として使う場合、建物の使い道を変える「用途変更」という手続きが必要になることがあります。

ここで運命を分けるのが、「デイサービスとして使用する部分の床面積が【200㎡】を超えているかどうか」です。 (※以前は100㎡でしたが、法改正により現在は200㎡に緩和されています)

もし、お目当ての物件が200㎡を超えている場合、役所の建築指導課へ「用途変更の確認申請」という大掛かりな手続きを行わなければなりません。

用途変更が必要になるとどうなる?

  1. 莫大なコスト: 手続きは行政書士ではなく「一級建築士」に依頼する必要があり、設計・申請費用だけで数十万円〜100万円以上かかります。
  2. 大規模な改修工事: 「階段の幅が足りない」「排煙設備がない」など、特殊建築物としての厳しい基準を求められ、数百万円の追加工事が発生することが多々あります。
  3. 致命的なタイムロス: 申請から許可が下りるまで数ヶ月かかります。その間、デイサービスはオープンできず、空家賃だけが飛んでいきます。

つまり、「広くていい物件だ!」と飛びついた結果、数百万〜1,000万円単位の想定外の出費を強いられ、資金ショートで開業を断念する……というケースが後を絶たないのです。

不動産屋さんは「介護のプロ」ではない

「でも、不動産屋さんがデイサービスで使っていいって言ってたよ?」

ここが最大の落とし穴です。 不動産屋さんは「物件を貸すプロ」ですが、建築基準法や介護保険法のプロではありません。彼らの言う「デイサービスで使えますよ」は、「大家さんが、介護事業所として貸すことをOKしていますよ」という意味でしかありません。

「大家さんのOK」と「役所のOK(法律のクリア)」は、まったくの別物なのです。

さらに、200㎡以下であれば用途変更の「手続き」は不要ですが、だからといって建築基準法や消防法(スプリンクラーや自動火災報知設備の設置など)を守らなくていいわけではありません。横浜市や川崎市は特に消防のチェックが厳しく、事前の図面相談を怠ると、後から消防署に「これでは営業できません」と止められてしまいます。

契約前に、必ず「プロのプレ診断」を!

物件選びで失敗しないための唯一の防衛策は、「賃貸契約書にハンコを押す前に、介護専門の行政書士に図面を見せること」です。

当事務所では、経営者様が見つけてきた物件の図面(マイソクなどの不動産チラシでOKです)を拝見し、以下のポイントを無料でプレ診断いたします。

  • 200㎡の壁に引っかからないか?
  • 横浜市・川崎市の「設備基準(訓練室の広さや相談室の完全個室化など)」を満たせる間取りか?
  • 消防設備で多額の追加工事が発生するリスクはないか?

「契約してから相談」では手遅れです。 貴重な開業資金を無駄にしないためにも、不動産屋さんに行くのと並行して、ぜひ当事務所を「セカンドオピニオン」としてご活用ください!