毎年6月から7月にかけて、事業主の皆さまにとって非常に重要な手続きの時期がやってきます。それは、労働保険の「年度更新」と、社会保険の「算定基礎届」の提出です。

これらの手続きは、会社が支払う労働保険料や社会保険料の金額を決定する上で不可欠なもの。正しく手続きを行うことで、余計な負担を避け、会社の労務管理を適正に保つことができます。

今回は、社労士として、この2つの重要な手続きの基本と、見落としがちなポイントを分かりやすく解説していきます。


労働保険「年度更新」とは?知っておくべきポイント

まずは、労働保険の年度更新についてご説明します。

年度更新の概要

労働保険の年度更新は、労災保険と雇用保険の保険料を確定・納付する手続きのことです。毎年6月1日から7月10日までの間に、以下の内容を申告・納付する必要があります。

  • 前年度(4月1日~翌年3月31日)の確定保険料の精算
  • 新年度(4月1日~翌年3月31日)の概算保険料の申告・納付

つまり、前年度に実際に支払った賃金に基づいて保険料を確定させ、同時に新年度の見込み賃金で概算保険料を計算して納める手続きなんです。

2. なぜ重要なのか?

従業員の皆さんに支払った給与総額(賃金総額)を正確に申告することで、会社として適正な保険料を国に納めることができます。もし申告を怠ったり、金額に間違いがあったりすると、後で追徴金やペナルティが発生する可能性があるので注意が必要です。

3. 具体的な手続きと注意点

  • 提出書類: 主に「労働保険料等算定基礎賃金集計表」や「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」などを作成・提出します。
  • 賃金集計の注意点: 賃金総額には、基本給だけでなく、通勤手当(非課税・課税問わず)、残業手当、役職手当、賞与など、従業員に支払われるほとんどのものが含まれます。日雇い労働者やパート・アルバイトへの支払いも忘れずに含めましょう。
  • 納付方法: 金融機関での現金納付のほか、口座振替や電子納付も可能です。
  • 電子申請の活用: 厚生労働省が提供する電子申請システムを利用すれば、自宅やオフィスから手続きができて便利です。

社会保険「算定基礎届」とは?報酬月額の決定プロセス

次に、社会保険の算定基礎届について見ていきましょう。

1. 算定基礎届の概要

社会保険の算定基礎届は、健康保険と厚生年金保険の標準報酬月額を決定するための手続きです。毎年7月1日現在で、全被保険者(従業員)の4月・5月・6月の報酬(給与)を届け出る必要があります。提出期間は原則として7月1日から7月10日までです。

2. なぜ重要なのか?

この算定基礎届によって決まる標準報酬月額は、非常に重要な意味を持っています。

  • 会社が負担する社会保険料の計算基礎となります。
  • 従業員が将来受け取る年金額に影響します。
  • 傷病手当金や出産手当金などの給付額の計算基礎にもなります。

もし誤った報酬月額を届け出てしまうと、会社が不必要な保険料を支払うことになったり、従業員の将来の年金や給付に不利益が生じたりする可能性があるため、正確な申告が求められます。

3. 具体的な手続きと注意点

  • 提出書類: 主に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届」を作成・提出します。
  • 報酬の範囲: 基本給はもちろん、役職手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、残業手当、賞与など、金銭で支払われるものだけでなく、現物で支給されるもの(例:食事、通勤定期券)も報酬に含まれます
  • 算定の対象者: 原則として、7月1日現在で会社に在籍している全ての健康保険・厚生年金保険の被保険者が対象です。ただし、育児休業中や休職中で全く報酬の支払いがない従業員は対象外となる場合があります。
  • 支払基礎日数: 4月・5月・6月の各月に給与の支払いがあった日数が、それぞれ17日以上(パート・アルバイトの場合は11日以上など例外あり)ある場合に、その月の報酬を含めて計算します。
  • 定時決定の原則: 算定基礎届によって決定される標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月までの1年間、原則として適用されます。ただし、昇給や降給などで大きく報酬が変わった場合は、随時改定という別の手続きが必要になることもあります。

【事業主必見!】間違いやすいポイントとよくある質問

  • 賃金・報酬の範囲: どこまでを賃金・報酬に含めるべきか迷うケースは多いです。例えば、お祝い金や見舞金、出張旅費の精算などは原則として賃金・報酬には含まれません。迷ったら社労士にご相談ください。
  • 算定基礎届の対象者: パート・アルバイトの方でも、社会保険の加入要件を満たしていれば算定基礎届の対象となります。
  • 遡及賃金: 過去に遡って支払われた賃金がある場合、その処理方法には注意が必要です。
  • 提出を怠るとどうなる?: 期日までに提出しなかったり、内容に誤りがあったりすると、年金事務所や労働基準監督署から指導が入ったり、追徴金が発生したりする可能性があります。

社労士に任せるメリット:正確・確実な手続きで本業に集中!

「年度更新」と「算定基礎届」は、その手続きが複雑で、専門知識が求められる場面も少なくありません。特に、従業員数が多くなると、その計算はかなりの負担となります。

私たち社会保険労務士にご依頼いただくことで、次のようなメリットがあります。

  • 手間と時間の削減: 煩雑な書類作成や計算から解放され、事業主様は本業に集中できます。
  • 法改正への対応: 労働社会保険関連の法改正は頻繁に行われます。常に最新の情報を把握し、適切に対応することができます。
  • ミスの防止: 複雑な賃金計算や報酬の定義などを正確に処理し、追徴金やペナルティのリスクを低減します。
  • 適切な保険料負担: 適正な保険料計算により、会社の無駄なコストを削減できる可能性があります。
  • 従業員の安心と信頼: 正しい手続きが従業員の将来の安心につながり、会社の信頼性向上にも貢献します。

まとめ:適切な手続きで健全な会社運営を

労働保険の年度更新と社会保険の算定基礎届は、会社の健全な運営と従業員の福利厚生を守る上で欠かせない手続きです。

「難しそう」「間違えたらどうしよう」と感じることもあるかもしれませんが、一人で抱え込まず、私たち社会保険労務士にご相談ください。貴社の労務管理のパートナーとして、正確かつ迅速な手続きをサポートし、事業の発展に貢献いたします。

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