近年、人手不足が深刻化する日本において、外国人材の受け入れは企業経営にとって不可欠な要素となっています。特に「特定技能制度」は、2019年に創設されて以来、多くの企業で活用されてきました。この制度は、一定の専門性・技能を持つ外国人材を受け入れることを目的としており、特定の産業分野における人手不足解消に貢献しています。

しかし、特定技能制度は法改正や運用の見直しが頻繁に行われるため、常に最新情報を把握しておくことが重要です。今回は、特定技能制度の最新動向と、企業が外国人材をスムーズに受け入れ、安定的に雇用していくために注意すべきポイントについて解説します。

特定技能制度の最新動向:対象分野の拡大と運用の柔軟化

2024年以降、特定技能制度はさらなる拡充の動きを見せています。

特定技能2号の対象分野拡大 これまでの特定技能2号は建設分野と造船・舶用工業分野に限られていましたが、2024年以降、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、宿泊、自動車整備、航空、ビルクリーニングなど、多くの特定技能1号の分野が特定技能2号の対象に追加される見込みです。これにより、これまで特定技能1号で最長5年しか日本に滞在できなかった外国人材が、2号に移行することで家族の帯同も可能となり、事実上永続的に日本で就労できるようになります。

企業が注目すべき点:

  • 外国人材の長期的な雇用と定着が可能になります。
  • これまで以上に計画的な人材戦略が求められます。
  • 長期雇用を見据えたキャリアパスの提示や、日本人社員と同様の福利厚生の充実が外国人材の確保・定着の鍵となります。

2、制度運用の柔軟化と見直し 特定技能制度の運用面でも、より現場の実態に合わせた柔軟な対応が議論されています。例えば、支援計画の作成や実施における手続きの簡素化、あるいは登録支援機関の役割の見直しなどが挙げられます。

企業が注目すべき点:

  • 最新の運用ガイドラインを常に確認し、制度変更に迅速に対応できる体制を整えましょう。
  • 不明点があれば、入管庁や専門家(社労士・行政書士)に相談するなど、適切な情報源からの確認を怠らないようにしましょう。

企業が特に注意すべきポイント

特定技能外国人を受け入れる企業は、法令遵守はもちろんのこと、外国人材が安心して働ける環境を整備することが不可欠です。

  1. 支援計画の適切な実施と記録
      特定技能外国人を受け入れる企業は、入国前から帰国後までの一連の支援を行う「支援計画」を策定し、適切に実施する義務があります。
      この支援は、自社で直接行うか、登録支援機関に委託することができます。
    • 注意点:
      • 支援計画に記載された内容は必ず実行し、その記録を詳細に残しておくことが重要です。入管庁による監査が入ることもあります。
      • 特に、空港への送迎、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習の機会提供、苦情・相談対応などは、適切に行われているか常に確認しましょう。
      • 支援を委託している場合でも、登録支援機関任せにせず、定期的に進捗を確認し、連携を密に取ることがトラブル防止に繋がります。
  2. 日本人と同等以上の処遇確保
      特定技能外国人の給与その他の待遇は、同等の業務に従事する日本人と同等以上であることが義務付けられています。
      これは、単に基本給だけでなく、各種手当、  残業代、昇給、賞与など、全ての処遇面で適用されます。
    • 注意点:
      • 賃金規程や評価制度などを見直し、差別がないか常にチェックしましょう。
      • 外国人だからといって、日本人社員よりも低い賃金設定や不利益な扱いは許されません。
      • 労働基準法に基づき、適切な労働時間管理や賃金計算を行うことが重要です。
  3. 労働災害・安全衛生への配慮
      外国人労働者は、日本の労働慣行や職場環境、危険に対する認識が異なる場合があります。そのため、より丁寧な安全衛生教育が必要です。
    • 注意点:
      • 入社時の安全衛生教育は、外国人労働者が理解できる言語で実施しましょう。必要に応じて通訳を介在させることも検討してください。
      • 危険作業を行う場合は、作業手順書の多言語化や、実際に作業を見せながらの指導が有効です。
      • もし労働災害が発生した場合は、速やかに適切な対応を取り、労働基準監督署への報告を怠らないようにしましょう。
  4. 外国人材の定着に向けた多角的アプローチ
      特定技能2号の対象分野拡大により、外国人材の長期雇用が見込まれるからこそ、定着支援はより重要になります。
    • 注意点:
      • 日本語学習の継続支援:業務に必要な日本語能力だけでなく、日常生活で困らない程度の日本語習得をサポートすることで、
        生活の質向上と職場への定着に繋がります。
      • 生活相談体制の強化:住居、医療、子育てなど、生活面での不安や困りごとを気軽に相談できる窓口や体制を整備しましょう。
      • 多文化共生への理解促進:日本人社員向けに、外国人材の文化や習慣への理解を深める研修を行うことも有効です。
        職場全体で多様性を尊重する雰囲気を作りましょう。

まとめ:専門家と共に、外国人材の未来を築く

特定技能制度は、日本の産業を支える重要な柱となりつつあります。制度の最新動向を把握し、外国人材が安心して、
そして長く活躍できる環境を整えることは、企業の持続的な成長に直結します。

複雑な制度の運用や法改正への対応、適切な労務管理には専門的な知識が不可欠です。
当事務所では、特定技能制度に関するご相談はもちろんのこと、外国人材の採用から定着支援、日々の労務管理までトータルでサポートいたします。

外国人材の確保・活用でお困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

従業員と共に、成長できる未来を築いていきましょう。