デイサービス(地域密着型通所介護)の開業に向けて、最もテンションが上がる瞬間。それは「理想の物件」を見つけた時ではないでしょうか。
「閑静な住宅街で、広くて家賃も安い一軒家を見つけた!」 「大家さんもデイサービスに使っていいと快諾してくれた!」
不動産屋から渡された賃貸契約書に、今すぐハンコを押したくなるお気持ちは痛いほど分かります。しかし、ちょっと待ってください!そのハンコを押すのは、一旦ストップです。
横浜市で介護事業立ち上げを専門とする行政書士として、断言します。 「大家さんのOK」と「法律のOK」は全くの別物です。
今回は、契約後に発覚すると取り返しのつかない「物件探しの3つの罠」について解説します。
静かな住宅街に潜む「用途地域」の壁

罠その1:静かな住宅街に潜む「用途地域」の壁
日本の土地には、都市計画法という法律で「ここは工場を建てるエリア」「ここは静かに暮らすエリア」といったルール(用途地域)が決められています。
特に注意が必要なのが、閑静な高級住宅街などに多い「第一種低層住居専用地域」です。 実はこのエリア、原則として単独のデイサービスを営業することが法律で禁止されています。もしこのエリアの物件を契約してしまうと、いくら内装を綺麗にしても、横浜市から指定(許可)が下りることはありません。
罠その2:広すぎる空き家の恐怖「用途変更」
「せっかくなら、広々とした200㎡以上の空き家を使いたい」と考えた場合、今度は建築基準法の大きな壁が立ちはだかります。
普通の「住宅」を、デイサービスなどの「福祉施設」として使う場合、建物の使い道を法律上変更する「用途変更(ようとへんこう)」という大がかりな手続き(建築確認申請)が必要になります。 特に古い建物の場合は、当時の適法性を証明する「検査済証」という書類が残っていないことが多く、用途変更自体が不可能で、泣く泣く契約を解除するケースが後を絶ちません。
罠その3:お年寄りを守る厳格な「消防設備」
普通の住宅とデイサービスでは、求められる火災時の安全基準が全く異なります。 お年寄りが利用する施設には、誘導灯、火災報知器、場合によってはスプリンクラーなどの本格的な消防設備の設置が義務付けられています。
横浜市の場合、介護の窓口へ申請を出す前に、必ず消防署と建築指導課の窓口へ図面を持参し、「事前協議」を行って許可(協議記録)をもらってくることが手引きで厳格にルール化されています。「後から消火器を置けばいいや」という軽い認識では、絶対に審査を通過できません。
ハンコを押す前に、まずはプロにご相談を!

いかがでしたでしょうか? この「3つの罠」を見抜けずに契約してしまうと、「デイサービスが開業できない物件なのに、毎月数十万円の家賃だけを払い続ける」という最悪の事態に陥ってしまいます。
当事務所では、事業主様が物件の契約を結ぶ前に、その物件で本当にデイサービスが開業できるのか、法律上の適法性をプロの目でチェックいたします。
「この物件、どうかな?」と思ったら、不動産屋で契約を急ぐ前に、ぜひ一度当事務所へご相談ください。あなたの貴重な開業資金を、見えないリスクから確実にお守りします!
次回は、物件が決まった後に待ち受ける「人員基準のパズル!生活相談員と管理者の兼務条件」について、横浜市特有のローカルルールを交えて解説します。

